
日本やアメリカだけに投資するのって不安・・・。もし金融危機みたいなのが起きたら、資産が全部なくなっちゃう。

日本やアメリカみたいな成熟した国より、まだ発展していない国に投資した方が儲かるに決まってるじゃん。
こんな人のための記事です。
確かに、「新興国経済」の見通しは明るく、これから発展することが予想されますが、「新興国株式」が同じように成長していくとは限りません。
この記事では、新興国経済の見通しが明るい理由を確認したあとで、新興国投資における想定すべきリスクを紹介します。
新興国経済の見通しが明るく見える4つの理由

理由①:人口増加が大きい
一般的に、人口が多いことは、それだけで潜在的な国力が強いことを表します。
下の表は、世界における人口上位 10 ヵ国の推移を表しています。

人口の上位 10 ヵ国のうち、アメリカを除く 9 ヵ国が新興国です。
また、新興国の代表格である中国とインドは、少なくとも 2050 年まで、最も多い人口を持つ国として君臨し続けると予想されています。

先進国の中で、唯一人口が増え続けるのがアメリカだね。
理由②:生産年齢の人口比率が高い
「人口ボーナス」という言葉を聞いたことありますか?
日本貿易振興機構 (JETRO) によると、
総人口に占める生産年齢 (15 歳以上 65 歳未満) 人口比率の上昇が続く、もしくは絶対的に多い時期に、経済成長が促進されること
日本貿易振興機構 (JETRO) 「人口ボーナス期で見る有望市場は」
とされています。
つまり、若い人の人口比率が多い国は、「人口ボーナス」によって経済成長の促進が期待できます。
この日本貿易振興機構 (JETRO) から発行されたレポートには、人口ボーナスが終了する年が明記されています。

このレポートによると、「人口ボーナス」は、アメリカ・日本ですでに終了しており、中国・インド・インドネシアのような新興国ではこれから何十年もその恩恵を受けます。
これは私の実体験なのですが、新興国へ行くと若い人が多いため、明るい将来が作られるエネルギーを感じます。

日本はなんとなく、元気がないんだよね・・・。
外国へ行ったことがない方は、(特に新興国へ) 行ってみることをオススメします。
日本にいるだけでは感じることができない、経済発展の勢いを肌で感じることができます。
理由③:GDP増加率が高い
「国内総生産 (Gross Domestic Product)」のことを GDP と呼びます。
GDP は、一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額のことです。
つまり、「GDP の増加率が高い」ということは、その国で生み出される「価値の増える速度が速い」ということです。
下の表は、2050 年までの予想 GDP の世界順位です。

中国・インド・インドネシアといった新興国における GDP の増加率は高く、これから大きく発展していくことが予想できます。
また、先進国の順位は落ちていき、2030 年で日本の GDP はインドネシアと同じくらいになります。

がんばれ、日本・・・!
理由④:投資できるETFが多い
新興国へ投資手段が多いということは、それだけ新興国へ資金が流入しやすいということです。
また、我々は ETF などを利用することによって、日本に住んでいながら新興国の発展に投資して、そのメリットを受けることができます。
新興国に投資できる ETF
No | ティッカー | 純資産 | ベンチマーク | 経費率 | 分配金 利回り | 組入れ 銘柄数 | 設定年 |
1 | VWO | 6.5兆円 | 世界新興国の 大型/中型/小型株 | 0.10% | 2.76% | 5002 | 2005年 |
2 | IEMG | 6.4兆円 | 世界新興国の 大型/中型/小型株 | 0.13% | 3.07% | 2628 | 2012年 |
3 | EEM | 2.8兆円 | 世界新興国の 大型/中型株 | 0.68% | 2.59% | 1248 | 2003年 |
4 | EMB | 2.0兆円 | 世界新興国の 米ドル建て債券 | 0.39% | 4.16% | 539 | 2007年 |
5 | EPI | 0.06兆円 | インドの 株式市場 | 0.84% | 0.79% | 352 | 2008年 |
この表は、「世界の新興国 ETF 純資産トップ 10 ランキング」を参考にしました。
表を作成するに当たって、
- 経費率、分配金利回りは、「yahoo! finance」を参考
- 105 円=1ドルで計算
- 期間や再投資など、公開情報の定義が曖昧だったため、リターンは未記載
(詳しく知りたい場合は、ティッカーのリンク先を参照)
としています。
それぞれの ETF の純資産は非常に大きいです。
東証一部の時価総額は、約 600 兆円ですので、それぞれの ETF が莫大な資産を持っていることが分かります。
この莫大な資産が、新興国へ投資として流入しています。
なお、EPI は SBI 証券で取引手数料がゼロとなっているので、インド市場のみに投資したい場合は、EPI を選択するとお得です。
それでは次に、良いことばかりに見える新興国投資が、なぜオススメできないのか、理由を紹介していきたいと思います。

もっと深く見ていくよ。
新興国株式・ETF投資がおすすめできない5つのリスク

リスク①:GDPと株価の相関性は低い
この「相関性」とは「関係性」と同じような意味です。
中国の場合を例にして、GDP と株価を見てみます。
中国 GDP

CSI 300 指数 (ASHR)

CSI 300 指数は、上海と深セン証券取引所に上場している株式のうち、時価総額の高い 300 銘柄で構成された指数です。
“ASHR” は、CSI 300 指数連動の ETF です。

CSI300 は、中国版 S&P500 みたいな指数だよ。
中国においては、GDP と株価に大きな乖離があります。
GDP は一貫して上昇しているにもかかわらず、株価は大きく上下しています。
つまり、GDP 成長率が大きい国であっても、株価も同様に上昇するとは限らないことが分かります。
リスク②:通貨の為替変動率が高い
新興国の通貨価値は、変動率が高く、しかも下落しやすいです。
新興国代表として、ブラジル・レアル (BRL) の通貨価値を見てみます。
BRL/USD チャート

このグラフは、BRL/USD のチャートです。
分子のブラジル・レアル (BRL) の通貨価値が上がれば上昇して、分母のアメリカ・ドル (USD) の通貨価値が上がれば下落します。
2011 年に 0.64 だった通貨価値は、2020 年には 0.189 まで下落しています。
これは、わずか10 年間でブラジルにおける資産が、ドルベースで約 1/3 の価値になったことを意味しています。

怖すぎて、ブラジルに投資はできない・・・!
リスク③:新興国のリターンは、S&P500インデックスを下回る
新興国株式 ETF である VWO と、S&P500 連動 ETF である VOO を比較します。
VWO は、世界の新興国の大型・中型・小型株をカバーするインデックスに連動したパフォーマンスを目指した ETF です。
また、VOO の他に S&P500 連動の ETF はいくつかありますが、パフォーマンスはほぼ同じです。
ここでは代表として VOO を採用しています。詳細は、こちらの記事をご覧いただければと思います。
VWOとVOOのチャート比較

VOO は継続して右肩上がりになっている一方で、VWO は何度か上昇と下降を繰り返しています。
時系列で見ていくと、VWO は、
- 2005 年~ 2007 年までは、激しい上昇
- 2008 年になって、リーマンショックで大きい下落 (約 65% の下落)
- 2009 年に上昇して、その後、2020 年までボックス相場
という、激しく変化したチャートになっています。
さらに結果として、15 年間の長期期間で見たとき、パフォーマンスは S&P500 を下回っていることが分かります。

当然、これからもこの相場が続くとは限らないけど・・・。
“BRICs” (ブラジル・ロシア・インド・中国) の言葉が生まれ、もてはやされて、早いもので 20 年が経過しました。
当時の過熱感からは想像できませんでしたが、新興国のリターンは、米国株式を下回ることになりました。
リスク④:配当(分配金)利回りが低い・経費率が高い
新興国へ投資できる ETF は、分配金の利回りが低く、経費率が高いです。
もう一度、新興国投資の ETF を見てみます。
No | ティッカー | 純資産 | ベンチマーク | 経費率 | 分配金 利回り | 組入れ 銘柄数 | 設定年 |
1 | VWO | 6.5兆円 | 世界新興国の 大型/中型/小型株 | 0.10% | 2.76% | 5002 | 2005年 |
2 | IEMG | 6.4兆円 | 世界新興国の 大型/中型/小型株 | 0.13% | 3.07% | 2628 | 2012年 |
3 | EEM | 2.8兆円 | 世界新興国の 大型/中型株 | 0.68% | 2.59% | 1248 | 2003年 |
4 | EMB | 2.0兆円 | 世界新興国の 米ドル建て債券 | 0.39% | 4.16% | 539 | 2007年 |
5 | EPI | 0.06兆円 | インドの 株式市場 | 0.84% | 0.79% | 352 | 2008年 |
分配金利回りから経費率を引いた株式 ETF のリターンは、最大で 2.9% 程度。
高配当 ETF である VYM・HDV・SPYD (3.5% ~ 5.5%) と比べると、少し寂しい数字です。
EPI にいたっては、インドの代表的な株式 ETF であるにも関わらず、経費率が分配金利回りを上回るので、持ち続けるだけで資産が減っていくことになります。
トータルリターンが S&P500 連動インデックスより低く、経費率が高い ETF は、持ち続けることにメリットを感じることができません。

それでも買うなら、VWO か IEMG かな。
米国インデックス投資と、高配当投資の詳細については、こちらの記事が参考になると思います。
リスク⑤:タイミング投資をする必要がある
新興国株式が右肩上がりにならないのは、VWO のチャートが物語っていると思います。
VWO の価格は、ボックス圏で上昇と下降を繰り返しています。
つまり、新興国株式への投資は、ある程度のタイミング投資が必要で、安いときに買って、高くなったら売るを繰り返さないと、資産が増えにくいです。
私の投資スタンスは超長期投資のため、基本的に売ることは考えていません。
そのため、売買を繰り返す必要がある新興国投資は、私の投資スタンスに合わないと考えました。
私の投資スタンスは、こちらの記事をご参照ください。
まとめ:新興国へ投資するときは、リスクを理解しよう

新興国は、これから発展が見込める市場です。
新興国経済の将来性は明るいです。その理由として、
- 人口増加が大きい
- 生産年齢の人口比率が高い
- GDP 増加率が高い
- 投資できる ETF が多い
といったことがあります。
しかし、「新興国経済の見通しが明るいこと=新興国の株式資産が上昇すること」ではありません。
なぜなら新興国投資では、
- GDP と株価の相関性は低い
- 為替リスクが大きい
- S&P500 インデックス投資のパフォーマンスを下回る
- 配当 (分配金) 利回りが低い・経費率が高い
- タイミング投資を行う必要がある
といったことを考える必要があります。
特に、上昇と下降を繰り返すチャートが嫌らしいです。
下落局面で耐えられなくなって、結果的に売買回数が増える可能性があります。
しかしその一方で、ほとんど話題に挙がらない新興国株式が興味深くもあります。

誰も話題に挙げないってことは、投資のチャンスなんだよね~。
そのため、現段階では、新興国株式へ積極的に長期積立投資をするのではなく、下落したタイミングで投資することが適切だと考えています。

高配当株投資の代わりに、新興国株式へ投資しても良いかも。
ご参考になりましたら幸いです。
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