
最近、コロナ対策で現金の供給が世界中で増えているよね。現金の価値が下がっているんじゃないの?

金に投資したいんだけど、どんな投資先があるのかしら?
こんな人のための記事です。
昔から「有事の金」と言われるように、株式投資のリスクヘッジとして金は買われてきました。
実際、2020 年 3 月頃のコロナショックの際には、一時的に株式と同じような動きをしたものの、その後は素早い回復を示しています。
この記事では、株式投資のリスクヘッジとして使える、金投資のメリット・デメリットを紹介したあとで、おすすめの ETF を比較します。
金投資のメリットとデメリット

金はビットコインなどと同様に、「コモディティ (実物資産)」と呼ばれています。
株式や債券とは異なる特徴を持ち、メリットやデメリットが存在します。
まず、金投資におけるメリットとデメリットを紹介します。
- 金の価値は変わらない
- 株式との相関性が低い
- 配当金を生まない
- 株式や債券より資産が増えない
- 現物の売買コスト、保管コストが大きい
メリット①:金の価値は変わらない
金の埋蔵量は決まっていて、希少性が変わらないことから、金の価値が変わることはありません。
これまで、人類が採掘した金の総量は、競技用プールの 3~4 杯分です。
そして、地中の埋蔵量は、競技用プール 1 杯分と言われています。
また、金の採掘技術は極端に向上しておらず、供給量が決まっていることから、その価値は普遍的に一定となっています。
そのため、現金の価値が下がると、相対的に金の価値は上がります。
一方、現在、世界の現金供給は増え続けています。
主な国の債務残高 GDP比

このグラフは、主な国の債務残高を表しています。
GDP 比で見て、過去 15 年にわたって、市場への現金供給は世界中で増え続けています。
特に、2020 年は新型コロナの影響による経済の衰えを防ぐため、現金供給を急激に増やしています。
日本における現金供給量

このグラフは、日本における現金供給量を表しています。
10 年間で 現金供給量は約 1.5 倍に増えていますが、他の国でも現金を供給しているため、日本円の価値だけが下がっているわけではなく、世界中で通貨の価値が下がっています。
また、このグラフから分かるように、コロナ対策に関係なく、現金供給は一貫して右肩上がりです。
一貫して右肩上がりということは、今後現金の価値は減り続け、金の価値が増え続けることを示しています。

現金を持っていても価値が下がるのなら、価値が下がらないゴールドにしても良いかなって思っちゃう。
- 金の埋蔵量は決まっているため、金の価値が変わることはない。
- コロナ対策に関係なく、現金供給は一貫して増え続けている。
- 相対的に、現金の価値は下がり、金の価値が上がり続けている。
メリット②:株式との相関性が低い
「相関性」とは「関係性」みたいな意味です。
相関性を数値で表したものを「相関係数」と呼びます。
1 が同じ動き、-1 が逆の動き、0 が全く関係のない動きをするくらいの理解で問題ありません。
米国株式と金の相関係数:JP モルガンのレポート

この表は、JP モルガン・アセットマネジメントから報告されている、2021年における金融資産の期待リターンとボラティリティ、相関係数の予想です。
このレポートによると、米国大型株式と金の相関係数は-0.01 と、相関性をほとんど持たないことが分かります。
次に、実際のチャートで相関係数を確認します。
米国株式と金の相関係数:チャート

このチャートは、上側が SPY のチャート、下側が SPY と GLD の相関係数を表しています。
SPY は S&P500、GLD は金価格にそれぞれ連動した代表的な ETF です。
先ほどの JP モルガンのレポートによると、米国大型株式と金の相関係数は -0.01 とありましたが、実際には相関係数がゼロ付近ではなく、1.0~-1.0 の間をばらついていることが分かります。

米国大型株式と金の相関係数は、平均すると -0.01 ってことなのかな。
さらに、コロナショックによる暴落時を拡大してみます。

コロナショックの直後 (最中) は、正の相関が強そうに見えますが、その後は 1.0~-1.0 の間をばらついて推移しています。
- 金は株式との相関性が低い。
- 株式が暴落したとき、金は下落しにくい。
デメリット①:配当金を生まない
個人的には、「配当金を生まない」ことが金投資における最大のデメリットだと考えています。
金はただの金属であるため、それ自体が資産になることはあっても、配当金のように資産を生み出すことはありません。
株式や債券とは異なり、持ち続けても配当金が生まれないため、現金化することによるキャピタルゲインしか得られません。
つまり、金投資は資産の売却が前提の投資です。

配当金がもらえたら、金に投資するんだけどな。
デメリット②:株式や債券より資産が増えない
複利の力を利用できないため、金投資はトータルリターンで株式や債券に劣ると言われています。
主要資産の累積価値

この図は、1800 年~ 2014 年の期間に、主要な金融資産の価値がどのくらい増えたかを表しています。
株式が 1800 万倍に増えたのに対して、金はわずか 86 倍です。
直近 10 年間のチャート

この図は、GLD、SPY、AGG の直近 10 年間のチャートを重ねたものです。
GLD は金価格、SPY は S&P500、AGG は米国債券に、それぞれ連動した ETF です。
GLD は、値動きが株式よりも激しい時期があることが分かります。
また、最近ではトータルリターンで株式に勝っていますが、切り取った期間によってリターンは変わりそうです。
例えば、2014 年~ 2018 年の期間、金の価格は停滞していましたが、2019 年になって、急激に価格が上昇しています。
- 歴史的に見て、株式や債券より、金は資産が増えない。
- 金価格のボラティリティは、時期によって変わる。
デメリット③:現物の売買コスト、保管コストが大きい
地金 (金の延べ棒) の売買コスト、保管コストが大きいです。
例えば、純金積み立ての場合、購入にかかる手数料は 1.5% ~ 2.5% です。
株式や債券 ETF の 経費率 0.1% 程度と比較して、とても高く感じます。
下の表は、田中金属工業で純金積み立てをした場合の、購入にかかる手数料です。

また、地金を購入した後で、セキュリティ対策が設けられた保管場所を準備する必要があります。
この保管コストも大きいと思います。

金の延べ棒を見るのが好きって人は、それなりにいそうだけど・・・。
金の投資方法とおすすめETF

金への投資方法
金への投資先には、地金 (金の延べ棒) や金貨、純金積み立てといった、現物を購入する方法があります。
しかし、現物の購入は売買コストと保管コストが高いため、投資信託か ETF による投資がおすすめです。
この記事では、SBI 証券と楽天証券で購入可能な ETF の中から、おすすめの投資先を紹介しています。
おすすめETF比較
SBI 証券と楽天証券で購入できる ETF
No | ティッカー | 純資産 | ベンチマーク | 経費率 (年率) | 分配金 利回り | 組入れ 銘柄数 | 設定年 |
1 | GLD | 7.4兆円 | 金価格 | 0.40% | 0.00% | ー | 2004年 |
2 | IAU | 3.3兆円 | 金価格 | 0.25% | 0.00% | ー | 2005年 |
3 | GLDM | 0.42兆円 | 金価格 | 0.18% | 0.00% | ー | 2018年 |
4 | GDX | 1.6兆円 | NYSE 金鉱株 インデックス | 0.52% | 0.51% | 53 | 2006年 |
5 | GDXJ | 0.59兆円 | 中小型金鉱株 インデックス | 0.53% | 0.28% | 92 | 2009年 |
この表は、SBI 証券と楽天証券の両方で購入することができる ETF の一覧です。
金価格連動の ETF は、分配利回りがゼロ円のため、持っているだけで費用がかかります。
一方で、金鉱株インデックス連動の ETF では、少しですが分配金 (配当金) が手に入ります。
金価格連動のETF

このチャートは、金価格に連動する ETF である、GLD、IAU、GLDM を重ねたものです。
3 つ全てほぼ同じ価格変動となるため、金に投資する ETF としては、経費率の最も低い、GLDM がおすすめです。
なお、GLDM は純資産が比較的小さいように感じますが、HDV の純資産が 0.53 兆円であることを考えると、全く問題ありません。
S&P500 インデックス ETF、高配当 ETF の純資産や経費率は、こちらの記事をご参考ください。

楽天証券は、GLDM の買付手数料が無料だよ。

- 金価格連動の ETF は、分配金利回りが 0%。
- 経費率が最安の GLDM がおすすめ。
金鉱株インデックス連動のETF

このチャートは、金鉱株インデックス連動 ETF の GDX、GDXJ と、金価格連動 ETF の GLDM を重ねたものです。
金価格と金鉱株インデックスは、同じような動きをしていることから、相関性の強いことが分かります。
また、GDX と GDXJ のボラティリティ (価格変動) の高さが目立ちます。
例えば、コロナショックの 2020 年 3 月~ 7 月の 5 ヵ月間で、125% 上昇した後、2020 年 8 月~ 12 月の 5 ヵ月間で、 50% も下落しています。

長期で持つには、かなり厳しい ETF かも。
- 金鉱株インデックス連動の ETF は、分配金 (配当金) を持つ。
- 金価格と金鉱株インデックスの相関性は高い。
- 金鉱株インデックスは、ボラティリティがとても高い。
まとめ:分散投資における守りの資産として金に投資する

株式のリスクヘッジとして使える、金投資のメリット・デメリットを紹介しました。
- 金の価値は変わらない
- 株式との相関性が低い
- 配当金を生まない
- 株式や債券より資産が増えない
- 現物の売買コスト、保管コストが高い
株式や債券より資産が増えないため、金を主軸にした長期投資は難しいです。
しかし、株式との相関性が低いことから、守りの資産として金に投資することは、分散投資において効果的だと思います。
現在、世界の現金供給量は一貫して増え続けています。
将来的に価値が下がり続ける現金を持つよりは、価値の上昇が見込める金を持っておいて、株式へ投資するタイミングで金を売るような運用が良いかもしれません。

今後は金価格の上昇が見込めるから、現金の代わりに持っておくのはアリだよね。
さらに、金投資における、おすすめ ETF を紹介しました。
金価格連動 ETF では、経費率が最安の GLDM がおすすめです。
また、金鉱株インデックス連動 ETF は、ボラティリティがとても高いので、リスク耐性の高い上級者向けです。
- 金価格連動 ETF では、経費率が最安の GLDM がおすすめ。
- 金鉱株インデックス連動 ETF は、ボラティリティがとても高い。
リスク耐性の高い上級者向け。
ご参考になりましたら幸いです。
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